この記事を読むことで分かるメリットと結論
結論:自己破産は「借金を法的に整理して生活を立て直すための手段」で、すべてが終わるわけではありません。免責が認められれば原則として借金の返済義務は消えますが、財産の一部は処分され、信用情報には一定期間記録が残ります。本記事では、免責の条件や不許可事由、財産・生活面の具体的影響、手続きの流れ、費用感、専門家の選び方、再建の実務的ステップまで、初心者でも分かるように丁寧に解説します。読むことで「自分が破産すべきか・どんな準備をすればいいか」が明確になります。
1. 自己破産の基礎と用語を整理しておく — まずここを押さえよう
まずは言葉の整理から。自己破産とは裁判所を通じて「支払い不能」を認めてもらい、借金の支払い義務を免除してもらう手続き(破産手続)のことです。ここで大事な用語を簡単にまとめます。
- 破産手続:裁判所が債務者を破産者として扱い、債務の整理・財産の換価(売却)を行う手続。
- 免責:裁判所が「その債務はもう支払わなくてよい」と認める決定。免責が出れば借金の返済義務は消えます(一部の例外を除く)。
- 同時廃止:破産管財人が介入しない簡易な破産手続。換価すべき財産がほとんどない場合に使われます。
- 管財事件:一定額以上の財産がある場合や、調査の必要がある場合に破産管財人が選任され、財産の管理・換価を行う手続。
- 免責不許可事由:浪費や財産隠し、債権者をだます行為など、免責が認められない理由のこと。故意または重大な過失が問われます。
破産は「借金をゼロにする最後の方法」と心得てください。任意整理や個人再生など他の債務整理手段と比べたメリット・デメリットは後述します。ちなみに、私自身が友人の手続き準備を手伝った経験では、「書類が揃っているか」が結果的に手続き期間や費用に大きく影響しました。申立前に必要書類を丁寧に整理することが非常に重要です。
1-1. 自己破産とは何か?:法的な意味と目的の整理
自己破産の目的は、支払い不能な債務を法的に整理して社会的・経済的に再スタートできるようにすることです。破産手続は債権者の公平な配当を図る一方で、債務者の生活再建を図る制度です。借金の総額が返済能力を大きく上回る場合に選択されます。
1-2. 免責と破産の違い:免責で何がどう変わるのか
破産手続は財産の処分と債権者への配当を行うプロセス、免責はその結果「返済義務を免除するかどうか」を裁判所が判断する別個の決定です。破産を申立てても免責が認められなければ借金は残る可能性があります。
1-3. 破産手続きの概要:申立から開始決定までの流れ
流れの一例(簡易):
1. 破産申立書を管轄の地方裁判所に提出
2. 裁判所による申立の受理(開始決定)
3. 同時廃止か管財事件の選別
4. 管財の場合は管財人による調査・換価(債権者への配当)
5. 免責審尋(必要があれば)
6. 免責決定 → 終了
手続き期間はケースにより数か月〜1年以上と幅があります。管財事件になれば長引きやすく、費用も増えます。
1-4. 同時廃止と管財事件の違い:手続きの分類と影響
同時廃止:財産がほとんどなく、管財人を立てる必要がない場合に適用。手続きが比較的短く費用も小さい。
管財事件:有価値の財産があり、それを換価して債権者に配当する必要がある場合。管財人が選任され、調査や換価、債権者集会などが必要になるため、時間と費用がかかります。一般に住宅や高価な車、預貯金がある場合は管財になることが多いです。
1-5. 申立先と裁判所の役割:どこへ提出するか、審査の流れ
申立先は債務者の住所地を管轄する地方裁判所(簡易裁判所では扱えないことが多い)です。裁判所は申立書の形式・内容をチェックし、財産状況や免責不許可事由の有無などを審査します。ここで申立書が不十分だと不受理や審理の遅延になります。
1-6. 免責不許可事由とは:免責が認められないケースの実務的理解
代表的な不許可事由には、浪費(ギャンブルや風俗での浪費など)、財産の隠匿(通帳や不動産を故意に隠す)、債権者をだます行為(詐欺的借入)などがあります。債務発生の経緯や債務者の行動が重要視されます。善意無過失かどうかがポイントです。
1-7. 事前準備のポイント:書類準備・注意点・避けたい落とし穴
必要書類は収入証明、預金通帳の写し、借入一覧、身分証明書、家計の状況表など。特に通帳やカード履歴は重要で、財産の隠匿を疑われないように最新の記録を揃えましょう。申立前に無断で財産を移転すると不利になります。私の経験では、「過去1年分の通帳コピー」を用意していた方がスムーズでした。
2. 生活・財産への影響を具体的に知る — 何が残り、何を失うのか
自己破産すると生活にどんな影響が出るのか、不安ですよね。ここでは生活・財産・家族への影響を具体的に説明します。ポイントは「生活に必要なものは残りやすい」「贅沢品や換価可能な資産は処分対象になり得る」ということです。
2-1. 財産の換価・没収の仕組み:何が対象となるのか
破産手続では、債権者に公平に配当するため換価(売却)できる財産は処分されます。現金、預貯金、有価証券、不動産(要価値がある場合)、高価な車などが該当します。一方、生活に不可欠な動産(布団、調理器具、一定の家具等)や最低限度の生活用財産は原則として差し押さえの対象外です。ただし、「高級ブランド品」や複数台の車などは換価対象になりやすいです。
2-2. 住まい・車・財産の扱い:居住と生活必需品の取り扱い
自宅が所有で資産価値がある場合、競売になって債権者へ配当されることがあります。ただし、共有持分や抵当権の有無、住宅ローンの状況によって扱いは異なります(住宅ローンが残る場合はローンがある限り競売対象になりにくいケースもありますが、詳細は専門家の判断が必要です)。賃貸住宅に住んでいる場合、契約自体は破産で直ちに解除されるわけではありませんが、家賃滞納があると退去を求められる可能性があります。車については、業務上必須の場合などを除き、売却対象になり得ます。
2-3. 収入・給与への影響:働き方・給与差押えの可能性
自己破産そのものが就業を禁止するわけではありません。公務員や一定の資格職で職務に影響が出る場合もありますが、多くの職種では破産による解雇は即時的には発生しません。一方、給与の差押えは破産手続開始前に行われていることがあるため、申立て前の滞納・差押え状況を確認することが重要です。破産後は通常、差押えが解除・整理されるケースが多いですが、生活保護や最低限の生活費確保については個別相談が必要です。
2-4. 保証人・連帯保証への影響:保証人の立場はどうなるか
自己破産した本人は債務の支払いが免除されても、保証人に対する債権は消えません。つまり、保証人(連帯保証人)は債権者から返済を求められるリスクがあります。家族や親族が保証人になっているケースでは、相談のタイミングや説明方法が重要です。保証人保護については、保証契約の内容や保証人自身の支払能力により対応が変わります。
2-5. 生活費の見直しと家計の再設計:実務的な節約・再建計画
破産後に重要なのは「再発防止」と「生活再建計画」です。まずは家計の棚卸し(収入、固定費、変動費の把握)。次に、緊急予備資金の目標(例えば生活費3〜6か月分)を設定し、支出の優先順位をつけます。公共支援(失業手当、生活保護の検討、就労支援)や職業訓練の活用も選択肢です。私がアドバイスしたケースでは、固定費の見直し(携帯プラン見直し、保険の最適化、家賃交渉)で月数万円の改善ができ、立て直しがスムーズになりました。
2-6. 免責後の生活再建の道筋:再就職・貯蓄・ライフプランの立て方
免責後は信用情報に一定期間記録が残るため、ローンはすぐには組めないことが普通です。しかし、カードなしでも生活は可能ですし、現金収入を安定させることで徐々に信用を回復できます。具体的には、安定した収入の確保(正社員化や副業の確立)、少額からの貯蓄再開、家計簿習慣の定着が有効です。再建の最短ルートは「生活の安定と小さな成功体験の積み重ね」です。
3. 免責の条件と不許可事由を詳しく解説 — 免責は誰でも受けられるの?
免責は自動で受けられるわけではありません。免責の可否は、債務発生の事情や申立者の態度、財産の処分状況などを総合的に判断して決まります。ここでは免責が認められる条件と、免責が認められない具体例を挙げます。
3-1. 免責の基本条件(収入・資産の状況、債務の性質など)
免責の大前提は「支払い不能」であることです。収入状況や資産は審査の対象。返済可能と見なされる場合は免責が却下されることもあります。また、破産手続自体で債権者への配当が適切に行われたか(管財事件での換価や配当手続)も評価に影響します。
3-2. 不許可事由の具体例とその影響
代表的な不許可事由:
- 慢性的な浪費(長期間のギャンブル、風俗等への浪費)
- 故意の財産隠匿(預金の偏移、不動産名義変更など)
- 債権者を欺く目的での借入
- 重要な申立書類の虚偽記載
これらが認定されると免責が不許可になり、債務は残ります。刑事事件等と連動することもあるため注意が必要です。
3-3. 不許可になった場合の対応策と再申立の可能性
免責不許可になっても、再申立が可能な場合があります。例えば、不許可事由が解消されたり状況が改善された場合は、数年後に再度免責申請が認められることがあります。また、不服がある場合は即時抗告などの法的手段を検討できます。具体的な対応は事案ごとに異なるため、弁護士への相談が重要です。
3-4. 免責審查の現実的な流れと期間感
免責審尋(裁判所での聞き取り)が行われる場合、本人が事情説明を求められます。審尋は短時間で終わることが多いですが、追加書類の提出や事情聴取が長引くと期間が延びます。総じて、同時廃止なら数か月〜半年、管財事件なら半年〜1年以上かかることが一般的です。
3-5. 申立前のリスク回避チェックリスト
申立前に確認すべきポイント:
- 全ての借入と債権者の一覧化(カード、ローン、消費者金融、家賃滞納等)
- 預貯金・不動産・車の名義・評価の把握
- 過去の支出(ギャンブル等)の記録整理
- 通帳やクレジットの明細をコピー
- 家族や保証人へ説明・相談
準備が不十分だと手続きが遅延し、免責に不利になります。
3-6. 免責後の生活設計と信用回復のガイド
免責後は信用情報の記録が消えるまでの期間(後述)を前提に生活設計を立てます。短期的には現金収入の確保、中期的には貯蓄開始、長期的にはローンの再取得を目標にします。信用回復の基本は「安定した返済・支払い履歴」の積み重ねです。
4. 信用情報と再建の現実的戦略 — ブラックリストはどれくらい続く?
「ブラックリスト」という言葉をよく聞きますが、正確には信用情報機関に事故情報が登録されることを指します。以下で期間や実務的影響、回復方法を説明します。
4-1. ブラックリスト掲載期間の目安と実務影響
信用情報機関(CIC、JICC、全国銀行協会の信用情報)では、自己破産情報(官報公告や返済不能情報)が登録され、期間は通常5〜10年程度とされています。登録期間は情報の種類(任意整理、個人再生、自己破産)によって異なります。期間中はクレジットカードやローンの審査が通りにくく、新規のクレジット契約はほぼ不可能と考えた方がよいです。
4-2. 新規クレジットやローンの取得の現実性
登録期間中は大手銀行やカード会社での審査は厳しく、キャッシング・ローンはいったん難しいです。ただし、審査基準は会社ごとに異なり、無担保の一般ローンは厳しくても、審査の緩い小口ローンや家族の協力(保証人)の下での融資が得られる場合もあります。実務的には、破産後はまず現金中心の生活に慣れることが現実的です。
4-3. 就職・資格取得への影響と対処法
多くの民間企業では自己破産が直接の採用差別理由にはなりませんが、金融業界や警備業、生命保険募集人など、信用や財務状況が厳しく問われる職種では影響を受ける場合があります。公務員については職種による制限があります。就職活動で不安がある場合は、職種選びや履歴書の記載について事前に確認しておくと安心です。
4-4. 信用情報の回復期間と回復手段
信用回復の王道は「時間」と「実績」です。事故情報が消えた後は、クレジットヒストリーを一から作る必要があります。具体的には、家賃や公共料金を確実に支払う、少額のクレジットカード(デビットカードや与信の低いカード)で返済実績を作るなど。貯蓄を増やし、頭金を用意して担保付きローンで実績を作る方法もあります。
4-5. 再建の具体的手段(貯蓄・収入源の確保・返済計画)
具体的な再建手順:
- 生活費の見直しと緊急資金の確保(3〜6か月分)
- 安定収入の確保(転職、資格取得、収入源の多角化)
- 少額でも貯蓄を続ける(心理的にも有効)
- 事故情報が消えたら、少額のローンで返済実績を作る
これらを段階的に達成することで5年〜10年で信用回復が可能です。
4-6. 主要機関の役割と活用方法(CIC/JICC/全銀協、法テラス)
信用情報を確認するにはCICやJICC、全国銀行協会の情報開示を利用できます。手続き前に自身の信用情報を確認して、どの情報が掲載されているかを把握すると申立・相談準備がスムーズです。また、法的な相談が必要なときは法テラスや弁護士・司法書士への相談がお勧めです。
5. 手続きの実務と専門家の賢い選び方 — 誰に相談すべき?
破産手続は書類が多く、法律的判断が入るため専門家のサポートがあると安心です。ここでは弁護士と司法書士の違い、費用感、必要書類、相談窓口の使い分けを実務ベースで説明します。
5-1. 専門家の選択肢:弁護士 vs 司法書士の違いと強み
弁護士:破産手続(代理人としての申立)、免責手続での代理、債権者との交渉、刑事事件や複雑な事案に対応可能。管財事件や裁判で争いが予想される場合は弁護士が必要です。
司法書士:簡易な破産申立のサポートや書類作成、債務整理の手続きで一定額以下の代理権を持つ場合があります(資格範囲に制限あり)。費用は弁護士より安い場合が多いですが、対応範囲に限界があります。
5-2. 費用の目安と費用透明性のポイント
費用は同時廃止か管財事件かで大きく変わります。目安としては、同時廃止であれば弁護士費用は数十万円、管財事件では数十万〜百万超になることもあります(管財予納金は裁判所により定められる)。司法書士に依頼する場合は弁護士より低額になるケースがあるものの、管財事件での代理はできない場合があります。費用の内訳(着手金・報酬金・実費)を事前に明確に示す専門家を選びましょう。
5-3. 必要書類一覧と提出時の注意点
必要書類(代表例):
- 破産申立書(専門家が作成)
- 借入先一覧(契約書、請求書)
- 預金通帳のコピー(過去1年〜数年分)
- 給与明細、源泉徴収票、確定申告書(個人事業主の場合)
- 不動産登記簿謄本、車検証など資産関係
- 身分証明書、家族構成の分かる書類
提出前にコピーを保存し、原本は指定があれば提出します。通帳や取引履歴を改ざん・隠匿しないことが重要です。
5-4. 相談窓口の使い分け(法テラス、日本司法書士会連合会、弁護士会など)
- 法テラス:経済的に困窮している方に無料相談や費用立替の制度を提供(一定の基準あり)。
- 弁護士会の法律相談:各地の弁護士会での初回相談を利用して比較検討。
- 日本司法書士会連合会:司法書士の相談窓口や紹介。
まずは法テラスや弁護士会の初回相談で現状整理をすると費用負担の目安がつきます。
5-5. 手続きの実務的な流れとスケジュール管理
実務では「書類準備 → 申立 → 裁判所手続 → 免責」と段階を踏みます。専門家とスケジュールを共有し、必要な期限(例:債権者への通知期間)を管理しましょう。弁護士を選ぶ際は「対応可能な連絡手段」「相談の頻度」「オンライン面談の可否」なども確認しておくと安心です。
5-6. 実務的な注意点とケース別のヒント
- 事業者(個人事業主)は事業資産と個人資産の区分が重要。
- 配偶者名義の財産でも婚姻期間中の共有財産の扱いに注意。
- 海外資産や暗号資産(仮想通貨)も申告不要は通用しないので必ず申告すること。
実務では「隠せば発覚して不利になる」ケースが多いので、正直に申告する姿勢が大事です。
6. 債務整理の選択肢との比較 — 自分に合う道はどれ?
破産は重要な選択肢ですが、任意整理や個人再生など他の制度もあります。ここでは主要な手続との違いと、どのケースで自己破産が適しているかを整理します。
6-1. 任意整理との違いとメリット・デメリット
任意整理:債権者と話し合いで利息カットや返済条件の見直しを行う私的整理。メリットは財産処分が原則ないこと、信用情報の登録期間が比較的短いこと。デメリットは債権者全員が同意しないと効果が限定される場合がある点。自己破産は債務を法的に消せるが財産処分がある。
6-2. 個人再生の要件と適用ケース
個人再生(民事再生の個人版):住宅ローンを除く借金を大幅に圧縮し、原則3年で分割返済する制度。住宅を残したまま再建したい人に向く。ただし一定の収入と継続した返済見込みが必要。住宅ローン特則を使えば自宅を守れる可能性があります。
6-3. 特定調停・その他の代替手続き
特定調停は簡易裁判所で行う調停手続で、任意整理に似た合意形成を目指す方法。手続きが比較的簡単で費用も低めですが、合意が成立しないと効果がない点が注意点です。
6-4. 自己破産を選ぶべきケースの判断ポイント
以下のようなケースは自己破産が選択肢になりやすい:
- 借金総額が返済能力を遥かに超えている
- 収入が継続的に確保できない見込み
- 任意整理や個人再生では返済が現実的でない
検討の前に専門家と具体的な数字(収入・支出・資産)を出して比較検討しましょう。
6-5. 各選択肢の費用感と時間感覚の比較
- 任意整理:期間6か月〜2年、費用は弁護士報酬+実費
- 個人再生:期間1年程度、費用は比較的高め(裁判所費用+弁護士費用)
- 自己破産:同時廃止で数か月、管財で半年〜1年以上、費用はケースにより幅広い
費用対効果を考えると、短期での借金整理を目指すなら任意整理を先に検討するケースもあります。
6-6. 再発防止のための生活設計
再発防止の基本は「予算管理」「緊急予備資金」「収入基盤の強化」です。月々の支出で削減できる項目をリスト化し、貯蓄ルール(収入の一定割合を先取り)を設定すると良いでしょう。金融リテラシーの学習も再発予防に役立ちます。
7. よくある質問と実践的ケーススタディ — 現実のシチュエーションで考える
ここではFAQ形式で現場でよく聞かれる疑問に答え、具体事例で現実味ある対応を紹介します。
7-1. 免責は必ず受けられるのか?難易度と現実
免責は一定の条件を満たせば受けられることが多いですが、免責不許可事由があると却下されます。実務では「過去の行動」「財産隠匿の有無」「銀行取引の明細」が重要視されます。全てのケースで必ず免責が出るわけではない点に注意。
7-2. 官報に名前が載るのか?公開情報の範囲
破産手続の開始や免責決定は官報に公告されます。官報は公開情報なので原則誰でも確認できます。ただし、一般の人が官報を逐一見ることは少なく、実生活で直接的な不利益(会社からの呼び出しなど)が発生するケースは限定的です。
7-3. 仕事や職場に影響はあるのか?就労の具体例
一般的な会社員であれば、自己破産が理由で即時解雇されることは通常ありません。ただし、金融機関や信用を重視する職種、公務員の一部では制約があるため、事前に就業規則や職務要件を確認しましょう。
7-4. 子どもや家族への影響はどうなるのか
配偶者や子どもの戸籍に直接的な記載はありません。ただし、保証人になっている家族は債務請求を受ける可能性があり、家族の信用にも影響することがあります。共有名義の不動産や生活費の分担については家族で話し合うことが重要です。
7-5. 破産後すぐに新しいクレジットを作れるのか
短期間での新規クレジット取得は困難です。信用情報機関の登録期間が経過するまでは審査に通りにくく、少額融資やデビットカード、プリペイドでの生活が現実的です。
7-6. 実務で直面しやすいトラブルと解決策
よくあるトラブル:書類不足、保証人とのトラブル、税金滞納、年金や社会保険料の問題など。解決策は早期相談と情報開示です。税金や社会保険料は別途扱いのことが多いため、専門家と早めに相談しましょう。
(ケーススタディ)
例1:28歳・正社員女性のケース — クレジット滞納が積み重なり、自己破産を検討。ポイントは「配偶者が保証人でないか」「賃貸契約の扱い」。弁護士と相談して同時廃止で早期解決、生活再建に成功した事例があります。
例2:42歳・個人事業主 — 事業資産と個人資産の区分が争点。結果として個人資産の一部を処分して免責が認められ、事業は整理の上で再出発したケースがあります。
8. よくある誤解と正しい知識 — 破産にまつわる間違いを正す
破産については誤解が多いです。ここで代表的な誤解を正しておきます。
8-1. 破産=人生終わりではない、再建は可能
破産は再出発の手段です。信用情報回復には時間がかかりますが、生活の再建は十分可能です。実際、多くの事例で破産後に安定した生活を取り戻した人がいます。
8-2. 破産手続き中の給与差押えと生活保護、支援制度の関係
破産申立後、差押えが行われていれば手続きで整理されることが一般的です。また、生活保護は一定条件で利用でき、破産手続きと同時に相談することで生活を維持できます。支援制度の活用は積極的に検討すべきです。
8-3. 住宅ローンや自動車ローンの扱いの実務
住宅ローンが残る場合、ローンの返済が続く限り抵当権によりそのまま居住可能な場合がありますが、ローンを滞納すれば競売リスクが高まります。自動車ローンは車の所有権留保がある場合、回収されることがあります。
8-4. 配偶者の信用情報と影響範囲
配偶者個人の信用情報は本人の同意がない限り直接影響はしませんが、共有名義・連帯保証がある場合は影響があります。家族は事前に確認・相談しておくことが大切です。
8-5. 戸籍・官報・公開情報の実務的な影響の実例
官報に掲載されても戸籍には記載されません。官報は専門的な公開媒体なので日常生活で官報を見て気づく人は稀ですが、金融機関や債権者は調査で把握する可能性があります。
8-6. 免責後の信用回復の現実的道筋
時間経過と小さな信用構築(光熱費等の支払い実績、貯蓄)を積み重ねることで、5〜10年でローンやクレジットの利用が現実的になります。早く信用を回復するためには堅実な生活と慎重な金融行動が必要です。
9. 今すぐできる行動ガイドと実践チェックリスト — 今日から動けること
ここは実務的なチェックリスト。直ちにできる行動を段階的に示します。最低でもこれだけはやっておきましょう。
9-1. まず取るべき初動の行動リスト
- 借入先と残高を一覧にする(カード、ローン、家賃、税金等)
- 預金通帳・カード明細をコピーして保管
- 支出の棚卸し(家計書を作る)
- 保証人がいるか確認し、必要なら説明する
- 法テラスや弁護士会で初回相談を予約する
9-2. 信用情報機関の情報確認と監視の始め方
CIC、JICC、全国銀行協会の信用情報開示を行い、自分の登録情報を確認しましょう。申立前にどの情報が載っているかを把握することで戦略が立てやすくなります。
9-3. 専門家への相談準備と質問リスト
相談時に持参するもの:借入一覧、通帳コピー、給与明細、確定申告書(事業者の場合)。
質問例:手続きの選択肢、費用見積り、想定される期間、免責不許可のリスク、家族や保証人への影響。
9-4. 生活設計の見直しと優先順位
- 最優先:住居と食費、公共料金の確保
- 次に:借入整理・専門家相談
- 中長期:仕事の安定、貯蓄開始
9-5. 再建に向けた短期・中期の目標設定
短期(0–6か月):家計の立て直し、専門家相談、申立の準備
中期(6か月–2年):申立と免責、生活の安定
長期(2年以上):信用回復と資産形成(貯蓄・投資の再開)
9-6. 法テラス・公的窓口の活用手順と連絡先
まずは法テラスで無料相談を受け、経済的支援の対象か確認。弁護士費用の立替制度が利用できる場合もあります。地方の弁護士会や司法書士会の窓口も活用しましょう。
参考情報・実務の窓口(最後に一度だけ)
- 日本司法支援センター(法テラス)
- 日本司法書士会連合会・各都道府県司法書士会
- 弁護士会(各地の弁護士会の無料相談など)
- 株式会社シー・アイ・シー(CIC)、株式会社日本信用情報機構(JICC)、全国銀行協会(信用情報センター)
- 官報(国立印刷局)
- 東京地方裁判所等、各地方裁判所の破産手続窓口
- 弁護士ドットコム等のオンライン法律相談サービス
まとめ
自己破産は確かに重大な手続きですが、正しい知識と準備、信頼できる専門家のサポートがあれば「再建のための有効な手段」になります。重要なのは早めに動くことと、書類や通帳などの証拠をきちんと揃えること。そして、家族や保証人への配慮を忘れずに行動することです。本記事を読んで「まず何をすべきか」が見えたなら、次のステップは専門家(法テラスや弁護士)に相談して具体的な計画を作ること。あなたの生活再建の第一歩を応援します。
参考・出典(この記事の主な根拠)
- 破産法(e-Gov法令検索)
- 日本司法支援センター(法テラス)公式情報
- 株式会社シー・アイ・シー(CIC)公式サイト(信用情報の取扱い)
- 株式会社日本信用情報機構(JICC)公式情報
- 全国銀行協会(信用情報に関する説明)
- 官報(国立印刷局)に関する説明ページ
- 各地方裁判所の破産手続案内ページ
- 弁護士会、日本司法書士会連合会の相談案内ページ
(注)本記事は一般的なガイドです。個別の事案では事情が異なるため、最終的な判断・手続きは弁護士や司法書士などの専門家へご相談ください。